維脈 

陰維脈および陽維脈

 

奇経八脈の最初の系統である衝脈、任脈そして督脈に我々の人生の旅に必要なすべての資質がギフトされていると述べた。したがって、我々には与えられた資質を維持して最適な方向に向かわせる責任がある。資質を成長、発達そして健康に使えるか否かである。我々は経験から学ぶことができるが、経験がチャレンジングあるいは困難である場合にも過去に学んだことからそれらの状況に適応させることができる。

陰・陽維脈は祖先から受け継いだ資質をどのように使うかに影響する。維脈は陰と陽の経絡を“連結”させることでその機能を働かせている。この連結はコミュニケーションの回路を作り任脈と督脈のエネルギーを分配させるシステムとなる。時間がかかるが我々は自分の資質を最適な方法で使用する方法を適切な場面で拡大し、保存しそして補充しながら学んでいく。

資質を分布させる能力は人生の中で試練や挑戦的な局面に出会ったときにより顕著になる。奇経八脈は成長と発展のサイクルを支配している。変化のサイクルは女子では7年、男子では8年毎である。一つのサイクルから次に移行する時に自分の資質をそれに適合させなければならない。例えば、月経を経験している女性と閉経している女性では血液に対する関係性が異なる。月経がある女性のゴールは妊娠をサポートするのに十分な資質を作り出すことであるが、妊娠しない場合には欠損を作り出すことなしに血液を放出させる。閉経後の女性のフォーカスは陰(血液)の保持であり、陰陽のバランスを取りながら健康でいることである。月経が止まった後の持続的な努力は陰の保持である。移行期における感情のインパクトは大きい。月経期の女性の感情は衰退して血と共に流れる。女性は感情に基づいてサイクルを把握する。月経前の移行期は身体が月経サイクルを保存モードの閉経に変化させるのでよりカオス的状況が発生する。これは家で交流から直流に電気を変えるような状況に似ている。交流は多少予測不能であるがこの時期の感情は一時的であり血液の排泄と共に消失する。直流である閉経時は子供の頃に経験する流れて消失していくような直線的な感情ではなくなるので、それらを意識的に処理する必要がある。陰(血液)を保持するようにしながら経験する感情を人生の後半における目的を達成するためにどのように使っていくかを考えるきっかけとなる。この二種類の電流のはざまで変移のカオスを体験する。我々には自分の持っている資質を新しい方法で使用するシステムが必要で、そのシステムは変移した状況に適合するのを助けてくれる。

維脈はある意味加齢の経絡と考える。例えば、思春期に必要な資質は中年のそれとは異なる。思春期の資質は個性化と探検である。大人になるための外に向かうエネルギーは情報と体験を集めるために使われる。中年になってくるとエネルギーを手放す事に向けられる。もし子供がいるのであれば彼らは自立する準備をして家を出ていくので、中年になるとエネルギーをセルフケアーに向けられる。これは生活がよりシンプルになり抱え込むものが少なくなることを意味する。自分の持つ資質をこれ以上贅沢に使う必要がなくなる。若い時のような食べ方・飲み方ができなくなってくる。我々の資質を保持するのをおそらくもっと見識のある方法で実施できるようになる。人々が加齢過程をどのように割り当てていくかは維脈に直接関連している。

ストレスや変化の時に我々は資質の使い方を調整する。新しい家に引っ越した、転職、結婚、離婚、出産、病苦の時などは自分の資質から多くのサポートが必要となる。どの資質を有効に使っていくかの決定は挑戦的状況との交渉になる。維脈の適切な機能は変化に対してすべての状況束ねる事である。変化に対する抵抗がある場合に維脈のインバランスが発生する。

長年にわたって資質を分配する維脈は歴史を記録している。ある意味我々の物語や経歴を代表している。陰維脈は我々の人生に起こった出来事によって我々自身の物質や構造の変化を記録している。陽維脈は今の人生を作り出した行動を記録している。尊敬する先生であるJeffy Yuenはよく維脈のメタファーとして女性の服を例えに出していた。服自体あるいは服のパターンやイメージは陰維脈であり、その服を着た人の行動が陽維脈であると。人生を振り返ると自分の取った行動が現在の自分を作っている。そして人生の出来事が形を作り変化をもたらした。

我々の歴史は将来を感知するのに影響を及ぼす。もし我々の維脈のインバランスがあれば過去に起こったこと、そして将来に起こるかもしれないことに多くの時間と努力を費やします。私たちはその瞬間に存在することができない。もし過去に起こった出来事に囚われていたならば陰維脈はインバランスです。もし前進することに恐怖を覚える、解からない恐怖によって動けない場合には陽維脈のインバランスが存在する。

ファンタシーや魔術的考え、変化に抵抗するあるいはまだ起こっていない出来事に対する恐怖感は今ここに生きている処から遠ざけるので、繁栄させるためにはマインド設定が必要となる。過去に生きるあるいは将来に対する恐れがあると気と血が消耗し、これらの資質が減少してくる。身体は自己保存ができるように作られているので、資質の喪失に対抗してこれ以上の喪失を止めるためにエネルギーの鬱滞を作り出す。この鬱滞は痛みや苦しみの原因となる。

 

 

陰維脈

陰維脈は陰気(滋養の気)および血と強い関係がある。陰と繋がっていることで身体の内部構造を統治している。任脈から出生後の陰経の資質とも繋がっている。これらの結合を介して必要に応じて出生前の任脈の陰のサポートと健全に産生された出生後の陰のサポートも使用できる。この陰維脈を介して陰の起源に戻ることができる。

 

 

陰維脈と心臓の痛み

年齢のサイクルを経過すると安全の愛の母性マトリックス(任脈)から外の世界に出なければならなくなる。外界の経験はいつもハッピーで満足できるものではない。事実、人生で経験する強力な体験は失望やフラストレーションに関係するものである。陰維脈が十分に機能しいているとこれらの失望を受け取って学び、今まで学習してきた内容と整合性を取らすことができる。これらの経験はより自分自身を高いバージョンに引き上げてくれることを理解できる。もし陰維脈が病的な状態にあると失望が今ここにいる意識を外に向かわせ、これらの出来事に執着させ不満の気持ちを抱かせる。そして自分の存在が不幸であると感じてくる。特に血の資質はこの不満足感によって消費されて鬱滞を作り出すが、この鬱滞が陰維脈の病理である心臓の痛みの源になる。陰維脈の鬱滞を持つ人々は感情的な痛みがあり、これが生活のすべての面の苦しみを作り出す。自分が誰であるかに満足していなければ、人生、恋愛、仕事で成功したと感じることはできない。

 

陰維脈と抑制

陰維脈は感情体における瞑想に深く関与している。この脈に障害がある場合に患者は不安、恥ずかしい、罪悪あるいは満たされない憧れなどの感情を持つ。彼らはハートが壊れた感覚を覚える。彼らは自分の人生が全くコントロールできない感情に苦しむ。彼らは将来を確立できないと感じるのは過去のトラウマや不幸な記憶に留まっているからである。この不幸感や強迫観念は過去の血と神(マインド/スピリット)に対する適切な滋養がなされていなかった事に起因する。これは更なる感情的な障害を作り出す。

これらの患者の多くは過去の歴史を書き直せたら全て良い方向に行くのではないかと感じている。彼らは、「もし・・であったならば」、例えば「もし違う時代に生まれていたら」、「もし違う親から生まれたら」、「もし両親が離婚したあと出ていかなければ」などにエネルギーが消費されている。彼らは過去に解決できなかった出来事に対する不安ベースの現実に苦しんでいる。

患者の中には記憶を抑圧しているので出来事を思い出せない人もいる。苦しんだ記憶のみでなぜそうなったのか理解していない患者もいる。いかなるトラウマや人生の早期に経験したトラウマや関連した感覚には彼らは対処できなかった。したがって、生き残る為にこれらの記憶を抑圧させるしかない。

抑圧された記憶は後に記述する滞脈に押し込まれる。陰維脈においては記憶の抑圧あるいは部分的な抑圧のケースを経験する。心包が自己保存のために抑制の影響から守る。記憶が忘れ去られえたとしてもトラウマ時に受けたフィーリングは持続して不安、不満や恐れがあるが患者はその感覚が起こった起源を認識していない。抑圧あるいは抑制は怒りを覚えた出来事を意識的に忘れることを選択した。時には記憶に伴ったある一面あるいは感覚だけを失っている。症例によってはマインドの中でトラウマを小さくする為の書き換えを記憶のプロセスで行っている。我々は過去の悪い記憶を追い出すために楽しい記憶にフォーカスすることが多い。しかし、時には悪い記憶に打ち勝つために偽の記憶を創造することがある。これは実際の過去の現実と自分の内面の真実との整合性が無くなった状態になる。

 

陰維脈とコミュニケーション

陰維脈の走行が喉の任脈の天突および廉泉に入り込んでいるので表現することが困難な患者いる。患者は自分の病歴を伝えるのが難しい。もし過去に重大なトラウマがあったらそれを伝えてこない。これらの話題に触れると喉に緊張し硬くなってくる。これらは喉のプラムピット(エネルギーの閉塞による喉の詰まり感)を診断するのに十分であるが、この感覚は喉に感覚を押し込めた症状でもある。これらは患者の抑圧のタイプの一つで自らこれらの話題を話せない、あるいは十分に準備ができていない状態である。彼らは適切な言葉を見いだせないあるいはこれらの話を持ち出す事で耐えられない感情がまた再現することを恐れている。

 

陰維脈と加齢

陰維脈の病的状態は加齢に関係する。陰維脈のインバランスである急性の不快感が加齢として表現される。不安感に関連して身体に重力と時間の結果が出現する。たるみ、皺、白髪化そして体重の再分布(陰)が陰維脈の病的状態として起こる。我々の多くは上手に年を取りたいと思っているが、わざわざ加齢による変化を確認する必要性を感じていない。多少の変化に対する抵抗感は覚えるので、若さ保持のためにライフスタイルの変更、食事の改善、若返りクリームなどを試みる。陰維脈に障害がある人たちは加齢に対して非常に敏感で彼らに起こっていることに過剰に神経質になる。彼らは目に見える加齢に対して極端な方法を選択する。彼らは外見で称賛されたり価値を見出された時を覚えており、時の荒廃を避けて若い時のイメージに戻りたいと願う。これらの問題はどのようにしても戻れない事である。一時的な化粧品や整形手術で元に戻れないことで彼らは持続的な不安の状態を作り出す。

 

陰維脈と不満

内在する陰維脈と交流する試みを持つと今の自分の生活の感覚における影響が大きいことがわかる。陰維脈が正常に機能して滋養の供給が十分であれば、我々は資質を賢く使うことができてチャレンジングな出来事もうまく管理でき人生の転換期も容易で祝福されたものになる。もし転換期がチャレンジングであっても困難な中を潜り抜けてそこに留まることがなく「あの時ああすれば・・・」という後悔が生まれない。もし自己満足感が欠如していると人生のチャレンジはうまくいかない。我々は人生に不満や自分が誰になったのか不満を覚える。不安、落ち込みそして欲求不満となりメンタルと感情のプロセスは強迫観念を伴う。

再度言うが、これらの感情的苦悩は血を消耗し鬱滞を作り出し心臓の痛みとなる。また違うタイプの痛みをも生じさせる。もしスピリットが心臓の痛みを解消させる事が出来なかった場合にはスピリチャルあるいはサイキックレベルで緊張を作り出して臓器の機能に影響を及ぼしてくる。自己保存を働かせる結果としてこの緊張状態は身体に埋め込まれる。陰維脈は陽維脈と関連があるので胸と腹部に蓄積した苦痛は外側に押し出されてより表面の痛みとして出てくるが、これは臓器の機能に対する緊急的な有害作用が少ない。これらは繊維筋痛症や慢性関節炎で診ることができる。

 

陰維脈の走行

陰維脈の走行の起源は下肢の内側面のKi-9(築賓:ちくひん)で、そこから足の内側面を上行して腹

部でSp-13(府舎)、Sp-15(大横)そしてSp-16(腹哀)に交流する。そこから胸部のLv-14(期門)に至った後に陰の源であるRen-22(天突)およびRenn-23(廉泉)に繋がる。この経絡の走行は三本の陰(三陰交:腎、脾、肝)が根源的な陰(任脈)に結合するリンクを現しており、内部の領域である感情にコネクトする流れを作っている。

 

陰維脈で治療する一般的な症状

・胸部およびハートの痛み

・上腹部の両脇の肋骨下部の詰まりや狭窄感、横隔膜の狭窄

・痹証(ひしょう)に関連する血虚(関節の無感覚とチクチク感)

痹証(Bi症候群): 現代的には抑鬱の原因が精神(食べ物を食べる欲求の欠如、話せない、精神的に休まらない)および肉体(エネルギーの欠如、消化器の障害)レベルで起こる

痹証は別名“Painful Obstruction Syndrome:痛みを伴う閉塞症候群)で痛み、腫れ、あるいは筋肉、靭帯そして関節の無感覚の症状

・精神―感情問題である落ち込み、不安、落ち着きがない臓器症候群(Zang Zao:臓躁)

臓躁:発作性の精神異常、悲しみ、啼く、そして身体の中が掻き回される感覚

・感情の詰まりによる背中の痛み、特に恐れ、驚愕そして悲しみ。

・消化器問題:嘔吐、未消化、食物過敏症、ガスとげっぷ。

 

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