奇経八脈は過去の人生や祖先から受け継いだ幸せな或いはトラウマ的プログラムを今生の人生で開いていく壮大な過去から未来に影響を及ぼす流れに今生きていることになる。奇経八脈に対する治療は今ここに存在する現在過去未来に影響を及ぼすことになる。ロシアの科学者のピーター・ガリエフらが実施したDNAファントム実験はDNAのパターンをDNAの消失後も光子が保持するという衝撃的なものであったが、祖先のDNAに刻まれたパターンを今生で引き継ぐという解釈もできる。

奇経八脈に関連する経穴は手と足にそれぞれ4つである。手の経穴は後渓、列缺、外関そして内関であり、足の経穴は照海、申脈、公孫そして足臨泣である。それぞれのペアーを上図に示した。図中央の青いラインの上下で同じ経穴のペアーであるが、最初に刺激を入れるのが主要穴でそれを迎い入れるのが受容穴である。例えば任脈は列缺と照海であるが、陰蹻脈は照海を最初に刺激をいれて列缺で迎える。すなわち、それぞれのペアーのどちらを最初に刺激を入れるかで流れる経路が違ってくる。

 

奇経八脈の臨床的な使用は関連する海などに蓄積した今生で蓄積した薬物、感情エネルギー、あるいは過去から引き継いだプログラムなどが治療によって塊が解され流動的になったら体外に追い出す必要がある。

 

身体の関連部位 排泄・運搬
任脈 腹部、胸部、肺、喉、顔面 陰蹻脈
督脈 身体背面、脊椎、首、頭、目、脳 陽蹻脈
衝脈 脚の内側、胃、心臓、胸、腹部 陰維脈
帯脈 脚と身体の側方、肩、首の外側、耳後方 陽維脈

 

この表はとても有用であるが、一つの見方である。更に詳しく理解する場合にはそれぞれがどこから始まりどこに終わるかの経絡図と経絡の支流しっかりとみる必要がある。それぞれの経絡の治療に関しては記載する。例えば衝脈、任脈そして督脈は身体の同じ海に源を発し、すべて腎に支配されている。これら三つの経絡はすべての経絡の発生源であり、腎は後天の気である精エッセンスを貯蔵する場所である。また陰蹻脈と陽蹻脈は踵に源を発して目で交わるので、現在の“スタンス“や”視点“をこれら経絡が知らせてくれる。これら経絡は現在における状態をどのように自身や周囲が見ているかを感じているかが見えてくるので、いかに立ち振る舞うかに影響してくる。

 

 

 

奇経八脈各論

 

衝脈:The Thrusting Vessel, The Penetrating Vessel

衝脈はすべての経絡の始まりである。衝脈はエネルギー的に無極であり、衝脈から陰(任脈)と陽(督脈)が発生する。衝脈はまた血の海(陰)、先天の気(元気)の海(陽)、五臓(陰)と六腑(陽)の海であるため生命に必要なすべての要素を含んでいる。衝脈は純粋な可能性、ユニティーそして全てを現わし、先祖そして両親から受け継がれた遺伝子情報や資質次世代に繋いでいる。衝脈は身体の大きな部分である足から頭の先端をカバーする5つの支流があり、胃と腎臓の経絡に深く関与して先天および後天の資質に影響を及ぼしている。衝脈は子宮にいる時の出産前の体験と出生後の新しい存在との懸け橋になっている。そして先祖の今の我々とのブリッジでもあるので系統の連続性を維持させている。主産前の衝脈はDNA(精)の貯蔵庫として機能し、受胎・妊娠によって資質が伝搬される。衝脈には個人の運命の種が貯蔵されているので、人生のカリキュラムがここに存在している。今生で実現される人生の贈り物は我々の何世代も前から受け継いだものである。このようにヒトが生まれてくると衝脈は出生前と出生後の存在のリンクを作り出し、先祖の系統、家族の歴史、そして自分が自分であるという土台を創造する。

衝脈がすべての出生前の情報・コードを受精卵渡し、受精卵は二つの電荷に分極して陰(任脈)と陽(督脈)に分かれ、それが更に多くに分裂していく。この創造は強力であるあるが同時にスピリットを犠牲にするプロセスでもある。全体性・ワンネスであったスピリットがワンネスからの分離のプロセスでもあるからである。したがって、意識の中にこの分裂を治したい、ワンネスへ戻りたいという本能的な意向が存在する。出生前の衝脈は一体感のあるユニティーであるが出生後は永遠に元のユニティーに戻りたいという意識・行動になる。もし生後の人生が愛に溢れた環境で自分の価値が高められるものであれば、元のユニティーに戻りたいという感覚は人生で体験する失敗や失望が起こるまで発現しにくいし、必要性を感じないが、最終的にはユニティーに戻りたいという意識は発現してくる。もし小児期が苦悩に満ちたものであればユニティーに帰りたいという渇望が人生の早期に生まれてきて以下のような自問が起こる。

・私は誰だろう

・私はなぜここにいるのだろう

・私の目的は

・人生の意味って何だろう

・これが全てですか

・全体ってどういう意味ですか

衝脈への治療は人生における旅の意味そして自分が何者かを信頼できるコアを思い出させてくれる。そして完全なる自分、壊れることなく何でも成し遂げることができる自分へ繋げてスピリチャルな存在であることを自覚させてくれる。また衝脈は自分の系統(血・スピリット)と結び付けてくれる。両親の持つエッセンス・精を衝脈から受け継ぐのであるが、両親のその時の状態を引き継ぐことになり、エッセンス・精が十分であったり不十分であったりして出生するが、その状態が人生のカリキュラムとなる。例えば両親が20代で元気が良い時に生まれたのであれば、両親のベストなエッセンス・精を引き継いで生まれる、両親が40代で精神的・肉体的な枯渇がある状態で生まれた何番目かの子供であれば出生前に授かる資質に欠損している状態である。肉体的にはある病気になりやすい、精神的に不安定、やる気や野望が少ないなどであるが、これらは人生に与えられたカリキュラムである事に気づくいて受け入れるとこれらカリキュラムを有効的に活用していくプロセスに辿り着ける事ができる。

世代に引き継がれる家系的な精神疾患、病気は遺伝子に組み込まれた情報であるがその遺伝子情報を発現させないようにする外部からの刺激によるエピゲネティックの手法として衝脈を用いることができる。衝脈による治療は世代間に受け継がれた負のチェーンを断ち切って、将来の家系に受け継いできたトラウマ情報を受け渡させないことができる可能性がある

 

 

 

衝脈へは足の経穴である公孫に先に刺激(音叉、光、鍼など)の刺激を入れた後に手の内関でそれらの刺激を迎えると中央の図のようなエネルギーの流れである衝脈を開通させることができる。衝脈は頭部から足に向かってエネルギーを流すので著者は頭部のエネルギーのうっ滞を解消させるのに多用している。衝脈の流れを見ると肺や胸部の乳房などに関連するのと体幹では消化器や腎臓に関連した流れも作り出すので消化器の運動異常、腎臓のエネルギー不足などに対応することができる。また足では内側を流れており、腎経と関連が深い。

 

衝脈の第一走行

経穴:Ren2;曲骨、Ki11;横骨、St30;気衝、Sp12;周栄 Ki12-21;

 

これは衝脈の主要な流れで心臓及び子宮(上および下の血の海)これは下焦(子宮)から始まり恥骨で合流して気衛と周栄に流れていく。そして正中から身体の中心を上昇して(腎経に沿って)横隔膜に至って胸に入る。この走行から出生前と出生後の気のリンクに関連することが解る。最初の精サイクル時における出生から出生後における出生トラウマ、重篤な病気や食事の問題はこの経絡の走行に病因や病理が存在することが解る。新生児が成長障害や成長過程における正常なプロセスを体験することができないことでも衝脈支流のエネルギーの流れが障害される。大人になっても出生から子供時にかけて人生を消化することができなかったことを理解している。これは生理的あるいは感情的な要求に応えられていないことに源がある。子供は精の最初のサイクル(7-8歳まで)で精が発達して出生後の機能が発達する。この発達は出生前の気の力が強いと強力にサポートされる。しかしながら、出生トラウマが出生前と出生後のエネルギーの繋がりを妨げる。また出生後に授乳困難や消化不良などによって十分な栄養が入らないと出生後の気エネルギーが傷害されると土の力(脾臓と胃)の機能が弱い状態となる。このような病態を維持する大人は下記の症状を持つ。

消化器の関連する症状

・消化異常

・慢性的下痢や便秘

・食べ物の停滞

・食物アレルギー

・食事不耐性;ラクトース不耐性など

・セリアック病

・リーキーガット症候群

 

これらの症状のほかに感情の視点から人生を消化できないことが多く、感情的な多食、慢性疲労、慢性鬱、新しいアイデアを追求できない。これらの患者は輪の上を走るハムスターの状態である。彼らは疲労するが輪から降りるという明確な考えが浮かばないので走り続ける。これは先天の気の欠乏の症状でもある。

 

 

衝脈の2走行

経穴:Ki22からKi27(歩廊~命府)、Ren22;天突、Ren23;簾泉、St1;承泣

 

この衝脈は任脈の支流と考えられている。この走行によって精がすべての胸および顔面領域の体液/陰精が結び付けられている。この走行によって胃の出生後の機能である“液の源”が清い液体を胸に上昇させて口周囲から目の承泣の任脈に与える。これによって顔面は血と液が与えられ感覚器官を養う。この走行は感覚器官の明快さを維持させる。この機能が傷害されると感覚器官からの情報が取れなくなる。めまいや軽い頭痛、外部からの情報をクリアに受けることができなくなる。

衝脈胸部の流れは腎経を流れているが、これら5つの経穴は五行を形成している。

Ki26 いく中 Po:肉体の魂
Ki25  神蔵 Shen:スピリット/マインド
Ki24 霊墟 Hun:エーテル体の魂
Ki23 神封 Yi:思考
Ki22 歩廊 Zhi:意志

五行で治療されている先生方は胸部の衝脈の経穴を応用することができると思われる。この衝脈の支脈が障害されると以下の症状が発現する。

・不安とパニック発作

・体内の緊急症状

・嘔吐

・胸の痛み

これらの症状を持つ患者の多くは自分が誰なのかをハートとのコネクションを失っているために忘れている。スピリットが滋養されないためにすべて必要なものが供給される深い根源との繋がりを失っている。衝脈の第の走行は心臓と腎臓とのコネクションも作っている。この結合がしっかりしていると、自分の経験の意味を理解することができる。衝脈の心臓と腎臓の関係が維持されると障害、トラウマあるいは病気が何であれその経験を自分の成長に生かし自分を深く知ることができる。これらの経験は自分の持った人生のカリキュラムにスピリットの光をいれて人生の旅に対する意味と目的を明確にすることができる。このレベルに至ると気力を失ったり運命に流されたりせずにハートで自分の運命を明確に追求することができる。もし心臓と腎臓のコネクションが失われていると生きる意味を失い情熱や欲望のみを追求し自身の成長を助けなくなる。情熱や欲望によった仕事を完結しても感覚的に空虚感を覚えてくる。それは健全な心臓と腎臓、精と血の関係性に基づいていておらず自己が存在する目的とは関係ない無意味な行動である。

 

衝脈の第三の走行

経穴:Ren2;曲骨、St30;気衝、GB26;帯脈、Du1;長強、UB17;膈兪

 

この第三の走行は認識と記憶に影響がある。これは督脈の髄の海(脳と脊椎)機能をサポートして血流を脳と心臓に供給するからである。もしこの走行の流れが障害されると活力が失われた感覚が生じる。命門の火が失われ陽からくる気力が低下すると意志の低下、無気力そして明晰さが無くなってくる。記憶の低下は脳および心臓の血の海から滋養が届かなくなるためである。認知機構低下に伴う老齢性痴ほう症、健忘症や失語症の原因となる。生理的には下焦に発生する血液のうっ滞による関節痛や脊椎の痛みが発生する。陽気の火か消えることで気が沈む、湿の蓄積の症状が発生する。陽のパワーである気力は督脈からの流れである。

 

 

督脈の第四走行

経穴:Ki11;横骨、Ki10;陰谷、Ki6~Ki3;照海~太谿、Ki1;湧泉

衝脈の鼠径部から足に流れる第四走行は蹻脈に強い繋がりを持つ。この走行は地球との繋がりを認識させ行動を軽くさせる。この走行は精を足の骨に供給することで、姿勢を維持させることができるが、姿勢は足から始まるからである。またこの走行は脾臓に陽を流す。この走行の不調和の兆候は子供が歩き始める時に認められる。最初に歩き出すのがとても早期あるいはとても遅いかである。もし歩き出すタイミングが早すぎると脳機能の座るや這うの機能が十分に発達する時間を与えない。もし歩き始めるのが遅すぎる場合には他の機能の発達も遅れる。体重が増えてから歩き始めるとバランスをとったり体重を支えるのに苦労する。成人でも足が虚弱で大地とのコネクトができない問題を生じるが、同時に精神―感情の不安定さも起こす。精神―感情を安定させるには大地とのグランディングが必要である。大地とのグランディングに関連する衝脈には3つのフォームがある。第一は腎との関係で、腎経の始まりである足裏の涌泉が大地とコネクトする必要がある。第二の衝脈のグランディングへのサポートは土(脾臓と胃)が身体の中心部を安定させる。地球は身体の中心へ安定感を与える。身体の中心がブロックあるいは弱いと体験を消化する力が無くなり、冷静さを出来事の正常に把握することができなくなる。三番目は血液である。血液は船を安定させるバラストのような機能である。陰の血が十分にあるとマインドの基礎が安定するので血液が十分に循環していると嵐の海に船が揺られても沈まない。衝脈の足に向かう気の流れを正常化させると気逆による喘息や消化器の問題を治療できる。

 

 

 

 

 

衝脈の第五走行

経穴:St30;気衝、St36;足三里、St37;上巨虚、St39;下巨虚、St42;衝陽、Lv1;大敦、Sp1;隠白

衝脈の第五走行は脾気と肝血の関係をサポートする。この胃経、大腸経そして小腸経への影響は我々が如何に同化するか、そして如何に清濁を分けるかに関連する。この走行は脾の機能である変容と運搬に関連する。脾の機能が正常に働いていれば血を作り、それを肝に貯蔵する。もし脾気と肝血が十分にあれば、それらは腎の陰気を補充する。この衝脈の第五走行は出生前の資質を維持する健康なライフスタイルを選択させてくれる。この走行が健康であれば出生後の資質(気と血)を生み出すのに十分な出生前の資質を出生前の資質(腎陰)を枯渇させないで人生の旅を与えてくれる。

この走行は広い範囲の消化器の異常を治療することができるばかりか人生自体を消化できない問題も対応できる。典型的な患者の訴えは感情的ストレスによって症状が悪化するという。強いストレスや感覚は肝気のうっ滞と脾が正常に機能しない状態を作り出す。十分な血が作られず、地に足が付いていない感覚や人生が過酷に感じられ感情によって容易にひっくり返されてしまう。これらの患者から多く聞かれる質問には、どこに行けばいいのか、何をしたらいいのか等で自分自身で決断することができずに他人にストレスレベルの低下と心の安定を求めてくる。

衝脈は出生前と出生後の気のブリッジであり、自身の核心の存在の源である。いずれにせよ自身は誰なのか、スピリット、光、愛、完全さを覚えているのが衝脈である。

 

衝脈によって治療可能な身体的状態

・血虚と血のうっ滞、血熱そして腎虚に関連する婦人科疾患

・三宝(精、気、神)に関連する状態、腎、脾・胃そして心臓

・気逆:足が冷たく顔が熱い、体幹部の膨張感、体内の緊急状態

・喉や乳房の塊(plum-pit:喉の詰まり、甲状腺、乳房の嚢胞)

・不十分な毛の発育:男性の髭、女性の頭毛。過剰な女性の顔の毛

・9種類の心臓の痛み:不整脈と動悸

・つわりや胃の過剰な症状群

・気逆による喘息あるいは痰のうっ滞

・足の萎縮

 

 

 

つづく

 

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