無極の頭頂から身体の中心を通過して足に向かう衝脈が陰陽に分かれて任脈および督脈分岐する。胎児期には宇宙の生命力を作り出す根源のエネルギーが臍から腎に入り督脈―任脈を循環する小周天が胎児を成長させている。今回は前回の任脈に続きPsycho-Emotional pain and Eight Extraordinary vesselの督脈の章を紹介する。
督脈:The Du Mai, The Governing Vessel, The sea of Individuation(個性化), The vessel of Separation(分離)
督脈は陽の海で先天の陽の貯蔵庫で人生に向かって動きだす原動力である。督脈は陽の臓器と陽脈を支配し陽の毒素である熱や風を追い出す。
督脈と独立
子供が上に向かって立ち上がって歩き出す頃に督脈が動きだす。督脈/個性化の海は子供に母体マトリックスからの“分離”するシグナルを送りだす。この初期の陽と遭遇する成長過程で子供は注意深く自分自身を外の世界に延長させていく。子供は次第に母親から離れ周囲の世界を探り始める。この過程で子供は母親の元にしばしば戻って快適さと安心の感覚を確認していきながら世界に出ていく勇気、自信そして能力を獲得していく。父親あるいは育児してくれる人(祖父、兄弟、叔父など)もこの時期に重要な役割を持つ。彼らは子供を勇気づけモデルとして役立ち子供の探検に勇気を与えてくれる。このプロセスに性差は関係なく女性の家族でも子供を勇気づけることができる。健康的な陽の行動を起こさせるモデルであれば性差はないのである。最終的にポジティブな体験をサポートして分離する時間と距離を長くさせる。すべての探求が成功すると子供は喜んで安全な母親から外に踏み出す事ができて自分自身の体験を得るようになる。
保育は親子の結びつきの任脈のから始まると述べたが督脈もこのプロセスに関与している。第七頸椎と第一胸椎の間にある大椎は頭を上げて乳首に向かう原動力を与える。首を持ち上げる力が次第に強くなると子供は周囲を見回すようになる。そして新生児は幼児になっていく。そして次第に力が強くなり好奇心が出てくると見える範囲を探検しだす。
督脈と空間の習得
臍の後ろにある命門は立ち上がって見えるものに対する探求する刺激を与える。時間をかけて命門は次第に力づき、周囲の空間を習得させ始める。子供は次第に小さな世界から征服を始める。家具周辺、ドアそして階段の上り下りなどからである。私は1.8歳の女児が階段を上り下りするのをナビゲートする能力をみて驚かされた。彼女は階段を上下する体験をロックしてその感覚を習得したと感じるまで止めなかった。
この行動は更に独立してもっともっと他者から離れようとする意志と好奇心が導いたものである。他者の運んでもらったりせずに“自分で歩く”という独立心が現れている。私は子供がベービーカーを自分で押しているのを見るたびに督脈が持つ表現に出会った感覚をもった。子供たちは自分のホームベース(陰)から離れて個々の体験を学んでいる。
督脈と無邪気・清純の喪失
督脈の主張は個性化へ移行させるので無邪気さの喪失につながる。面倒を見てくれる人達の持っている世界感であるこの世は安全でない、残忍そして困難であるなどの体験は子供に大きな影響を与える。子供が体験してきた牧歌的な世界から認識が変わる経験が含まれてくる。健康な子供は一時的にいつでも容易に陰(母親)に帰って自分が愛され安心できることを確認することができる。その感覚によって探求を再び始められる。
督脈の力が弱い子供は引っ込み、回避あるいは撤退が起こる。督脈が弱いあるいは過剰な懸念や恐れがある母親(任脈)の存在があると痛み、失敗そして評価を避けたいという気持ちが子供に起こる。このような子供は世界を探求する行動が制限されてくる。新しいことを学ぶのが困難で誰かが自分の代わりにやってくれることを好む。母親のマトリックスの安心感を持てなかった子供はあたらしい世界に対する恐怖や制限された範囲でしかアプローチできない。彼らは自分が安全であると認めた場所や誰かにしがみついている。これらの子供は歩くのがゆっくりで、運んでもらうことを好み、話し始めが遅く、おしめ離れが遅く人見知りがある。
督脈と探求
外に向かう探求は発育のステージに重要である。子供たちは行動する機会と失敗そして再びトライすることが必要である。子供たちの周囲には探求の行動の試みをサポートして勇気づける人たちが必要です。外への行動の拡大は幼児に新しい事へトライして新しいスキルを発達させる。これらの探求は子供自身が分離した個人である感覚を得るのに重要で自分の周囲を制圧させることができるようになる。この時期が十分にサポートされていると子供は課題をやり遂げる自信を得て好奇心が彼らを前進させる。これらの過程は任脈と督脈のバランスが重要である。
健康な母親のマトリックスを持った子供は自分たちの制限を外すテストをした後に母親の元に戻って不安感を癒すことができる。健康的なロールモデルの父親は自信と熱意を子供に与えるので子供は新たな試みが触発され勇気づけられる。
母親の資質が不十分であると子供は反対の行動になる。安全の感覚の欠如が存在すると任脈の安全性を知らない為に無謀の世界に過剰に入り込んでいく。彼らはこの世界が困難であることを乗り越えるために強く叩かれながら生きるようになる。これらの人の幼少期は“恐れ知らず“として称賛されたかもしれないが真実は、彼らは傷ついていた。任脈の無条件の愛なしに生命は貴重であることが認識できないので生命に関連する事柄が分からない。したがって無謀な行動の結果がどうなるかも分からない。
任脈のコントロールを打破する
過剰にコントロールする母親あるいは恐怖心が強い母親の任脈との繋がりが過剰に強い子供は母親からの分離がとても困難である。初期の子供の行動が恐れや過剰なコントロール下の母親に阻止されるとその後の探求心が起こりにくくなる。しかしながら、子供の督脈が体格的に十分に強い、あるいは父親が督脈にエネルギーを注入すると子供は過剰な母親との結びつきに反抗して分離を始める。この陽の力が過剰に強いと子供が分離する時期が早すぎることも起こる。衝脈のカリキュラムを授かっている子供は督脈を介して独り立ちを主張する。
督脈と早期の独り立ち力
私の息子はとても活発な赤ちゃんで早期に歩き出した。子宮の中にいる時からよく動き、出生後も活発でした。胸(任脈)に抱きかかえるとほぼ同時に上に動き出して肩から背中(督脈)方向に移動した。私がすぐに元の胸に戻しても少しずつ同様に上ってきた。
彼は7か月で離乳したが、母親の腕の中よりもベービーカップからを好んだ。私は仕方なく彼の行動に従った。彼はほとんど這うことなしに起き上がって歩き始めた。この早期歩行に対するインパルスは衝脈から督脈に起因している。これは身体的な素因である。
彼は常に独立心が強く聡明であったが学校関連の問題があった。それは視覚に関する問題で、読んで内容を理解する能力に影響していた。彼は這うことをしていなかったので目の中心部の視野が盲目スポットになっていた。彼は独立を急いだあまり情報を両側の情報をクロス(陰陽)させる脳を発達させることができなかった。目は任脈と督脈が合流する領域である。この問題はビジョン療法によって修正させることができた。興味深いことに、ビジョン療法は長い時間ジャンプ台で上下に飛び跳ねる方法をとるのであるが、これは衝脈の第四の関連の治療と同じで這わないことで発達しなかった脳の領域を刺激するものであった。
個性化へのモチベーション
子供初期の任脈と督脈の推移はヒトの個性化に大きく関与している。個々が世の中で進む道ができてくる。健康的な個人は任脈と督脈のバランスが必要である。人生の中で健康的な方法でこれらをどのように結びつけるかを教えてくれるヒトや世界を探索するモチベーションを活性化させてくれるヒトが必要です。
大人としてあなたは督脈のモチベーションを考えてみよう。あなたは自分の身の回りの世界を探検したいヒトですか。新しい事やアイデアに興味ありますか。督脈は脊椎に入って身体を上方に維持します。自分自身で立ち上がれますか。脊椎ありますか。どのように権威者に対応してますか。あなたは自分の人生を作るために他人の構造を必要とするのか、あるいは他人がどこに行けとか、指示に対して怒るヒトですか。
健康的な子供であったならば自分の翼を広げて飛ぶチャンスが与えられていました。我々の両親は失敗を許しながら深く傷つかないようにさせながら学ばせてくれた。次第に我々は何ができるか学び、新しいことに挑戦する勇気を持てるようになってきました。
督脈と勇気
もし督脈のエネルギーが枯渇している、体格的に弱い場合には意志の力が弱まり何か成し遂げることができないだろうという感覚になる。自分の自尊心が無くなり無関心あるいは臆病な状態に落ちりやすい。臆病を表現する言い方で尻尾を巻いて逃げるがあるが、脊椎の強さと上体が真っすぐであることは命門、大椎および百会の関連である。姿勢が真っすぐに上を向いていれば世の中に向かっていく勇気と強い意志があると評価できる。
督脈の過剰
督脈のエネルギーが過剰であると生理的な症状である癲癇や硬化した脊椎などが現れる。その硬さは感情あるいは認知でも現れる。督脈のエネルギーが過剰であるヒトは容易に妥協することができない。彼らは事象を白か黒かとしか見れない。彼らはより外向的な性格で感じる事よりも考える方がより安心できる。熱は督脈のエネルギーが過剰に存在する症状であり怒りの管理が必要になる。熱が風熱となった場合には衝動的な危険な行動を行ってもその行動結果を無視するようになる。これらは十分な配慮なしの行動である。
督脈の経絡は真っすぐな姿勢を維持させ高く立たせて自身の世界に向かう道を作らせる。恐怖に立ち向かう勇気と意志で乗り越えさせ、モチベーションの力を与えてくれる。
督脈の走行
督脈の主要な走行は衝脈と任脈と同じ下焦から起こる。そこから下降して会陰に合流して身体の後方に向かって背側の正中線を頭に向かって上行して頭頂で前方に回って下り顔面に至り、口の中の齦交(ぎんこう)で任脈と合流する。この分枝は脳への出入りとなり神経的そして認知機能に関与する。督脈は任脈支流と重なる流れであり陰陽の身体の中での結合を認識させてくれる。この経絡の結合は督脈と心臓をコネクトさせる。また督脈は膀胱経の腎兪、風門そして清明で先天の陽気と後天の陽の表現を繋げてくれる。
督脈の陽気が弱いと姿勢を上方に維持できず人生における勇気と意志力が弱い。督脈の陽気の過剰は陽気を保持できず怒りや衝動的行動の管理が問題となる。
督脈の走行図
督脈で治療できるコンディション
・神経的状態:意識や認知異常である失神、てんかん発作、記憶力低下
・腎陽や心陽の欠乏に起因する機能低下
・婦人科疾患で腎陽虚に関連する不妊症や視床下部性無月経
・風の症状:内風および外風
・脊椎の問題:特に前屈や後屈ができない強い凝り
・下焦の機能低下、特に気の沈下や陽気が固められない状態(痔、失禁)
・頭、首、背中の痛み
完全な両親
祖先から受け継いだ資質を如何に今活用しているかを観る時に両親のことを述べたい。もし両親が必要としているものを与えてくれなかったらどのようになるのだろう。我々の人生の意味が直接我々を育ててくれた人達に関連していると述べた。ここで両親を守ってみたい。我々の患者の中には明らかに両親や祖父母から虐待を受けた人々が存在するが、多くはすべて子供にとって最良なことをしてきたとする両親も多い。子供に対する暴力や虐待に対するいい訳にならないが、ほとんどの両親は社会で機能するメンバーとして子供を育ててきた。彼らは最良の方法で子供を愛した。ここに子育ての真実がある。そこにはルールブックやキットは存在しない。子育ての過程であなたは基本的に期待も大きく、祈りながらベストを尽くしている。子育ての仕事は自身を冗長にさせることである。適切に育てていれば子供は成長して自身の人生を歩む為あなたを置いて出ていく。
両親も子供であった時代にすべて欲しいものが手に入った訳ではないが、彼らが親になった時に同じ思いをさせまいと自分の子供に与えるものは与えてきた。年を取るにつれて我々は両親の言葉使いや行動パターンが似てきて次第に我々は両親とそっくりになってしまう。
幸運なことに我々は両親ではなく、両親から学ぶものをより注意ぶかく選んできた。我々は自分の弱さや失敗に対して両親を責めてはいけない。我々は子供時代の真実を受け入れて、今大人としての自分を思い、様々な選択をしてきた今がある。両親に対する大きな贈り物は両親を許し、私たちにできるだけのことをしてくれたことに感謝することです。